2009年9月21日月曜日

ウソはいけない。ウソをつくのに郵便を使うのはもっと、いけない。

先日@hokayanが「蟻さんが25匹、普通郵便で届いた」というTweetをあげていた。郵便ってすごいなぁ、こんなものまで運んでくれるんだ、としきりに感心。

日本だけとの比較だが、アメリカの郵送費は安いな、といつも思う。安い割に結構Reliable。 他のところではかなりいい加減な局面が多いアメリカの政府系サービスの中では筆頭の信頼性と言ってもいいかも。パスポートやSocial Security Number 証書という超重要文書でさえ、普通郵便で届く。しかも少なくとも私の個人的体験では確実且つ迅速に届く。ちなみにパスポート申請は郵便局で執り行う。郵便局とか郵便が実は人生の大事な局面に関わっている。

そんな重大な役割を担う郵便屋さん。従業員はみな連邦政府に雇用された国家公務員。一応「国事」に関わる職種であり、米国市民であることが条件の一つ。永住権しか持たない私はどれだけ職業適正が高かったとしても、残念ながら郵便屋さんにはなれない。

国事に関わるだけでなく、結構危険も伴う。2001年9月11日の同時多発テロ事件の直後、「Anthrax」という毒物を入れた郵便物が国会議員やメディア宛に送られ、その封筒の扱いに関わった郵便局職員が被害を受けるバイオテロリズム事件があった。首都ワシントンDC周辺の郵便局や国会議事堂が清掃のため一時閉鎖され、清掃作業はその後も4−5年続いたらしい。

たかが郵便、されど郵便。何が入っているか分からないし、悪用しようと思えば意外に簡単にできる。そして法的には悪用行為そのものだけでく、「何か悪いこと」の実行手段として郵便を使うこと自体が刑事罰の対象になっている。これが良く聞くところの「Mail Fraud」というもの。

Mail FraudはUnited States Code Title 18, Chapter 63 に規定されている。例えば、ウソの商品を郵送した場合、「ウソ」そのものに対する罪の上に、最大20年の懲役を伴うMail Fraud罪もついてくる。(Section 1341) また、虚偽や架空の名義/住所を使って郵送するのも御法度の対象。こちらは懲役最大5年の罪になる。(Section 1342)

なので、たとえば@hokayanに送られてきた蟻さん。本当は違う生き物だったりしたらそれはそれで当局の取締り対象に勿論なります。その上に、郵送で送ってきているので、さらにMail Fraud罪もくっついてくるという結果になり得る。

脱税や虚偽のインサイダー取引といったホワイトカラー系の犯罪の場合、ほぼ確実と言っていいほど起訴罪状に含まれる、Mail Fraud。有名なところではEnronのKenneth Layや脱税でつかまったホテル界の女王、Leona Helmesly。いずれもしかり、だった。

フィクションの世界だが、法律ミステリー系の第一人者John Grishamの人気小説、The Firmにも最後のオチとして登場した。(Tom Cruise主演の映画にもなっています。)大手法律事務所のパートナー弁護士とクライアントが結託して巨額の富を横領、ケイマン諸島のTax Havenに隠す隠蔽工作を行っているのを、主人公である若い優秀なハーバード出身弁護士とその秘書が徐々にその全貌を紐解いていく。連邦捜査局(FBI)は彼らによる証拠収集を待って、起訴するべく待ち構えている。ところがクライマックスに登場するのは「依頼人に不当な請求書を送った」および「Mail Fraud」という罪。多分、このあたりをとっかかりにまず逮捕をし、さらに取り調べた上で起訴項目を累積していくんじゃないかな、と予測するが...それにしても読者としては最後に「ふーーーん、それで捕まっちゃうの?」とがっかりさせられたのを覚えている。もうちょっとそれなりのシリアスな罪状の方が納得できたのに。

刑法は専門外なので勝手な想像になってしまうが、おそらくMail Fraudというのは起訴も立証もしやすい罪なのだと思う。検察にとってはある意味便利ツールのような役割もあるのではないだろうか。ちなみに「Wire Fraud」という電波通信を用いた場合の同様の規定もあり、例えば電話やインターネットを介したコミュケーションはその対象となる。

EメールやFacebook、Twitterといったソーシャルネットワーキングサービスを介したコミュニケーションの比率が圧倒的に高いため、郵便を殆ど使わなくなって久しい。逆にパスポート、税金の申告、支払いチェックといった「大事」なことでお世話になっている。「Mail Fraud」という名称は現代にそぐわない感はあれど、今も引続き刑法上の威力を発してくれているのは実は有り難いことなのかも。







2 comments:

yomi さんのコメント...

確かにアメリカの郵便は正確で安いと思う。それに郵送したい郵便をポストの上においておけば持って行ってくれるのはとっても便利。なんで日本はそうしてくれないんだろう?
正確&安価で思い出したけど、インドの南部であるダバワラって弁当配達制度凄いですよ。何千人というひとに毎日間違いなく弁当を自宅から配達する。あまりに簡単なシステムながらその間違いの無さに確かBBCが放映&どこかのアメリカ大学がケーススタディーに使ったと聞いたけど。。。やっぱ間違ったおかあちゃんのお昼が届くというのは誤送郵便より反感を食らうんで切磋琢磨したんだろうなー。
郵送がまったく駄目なイタリアの郵政省が観たらどう思うんだろう?
http://en.wikipedia.org/wiki/Dabbawala

Aki さんのコメント...

Yomiさん、いつも読んでいただきありがとうございます。ダバワラ、面白いですね。ローテクの勝利っぽい話で、こういうの大好きです。:)