前回ブログの映画特集で紹介したTwelve Angry Men は陪審員のドラマ。
陪審員制度はアメリカ法制度の礎の一つと言われる。「被告人を裁くのは『jury of your peers』(仲間による裁き)」とLaw School時代に何度となく刷り込まれた。政府(お上)が裁く機能を持つことは裁判の不公正につながる。裁かれる人間に「近しい」人間が裁きを下すことが裁判の公立中正を保つのにつながる、と。
陪審制度そのものは憲法で保障されているが、「jury of your peers」にまでは具体的に言及していない。憲法上保証されているのは修正憲法6条および14条の以下の文面:
Amendment 6
"... a speedy and public trial, by an impartial jury of the State and district wherein the crime shall have been committed."
Amendment 14
"... no State shall deprive any person of life, liberty, or property, without due process of law, nor deny any person the equal protection of the law."
言い換えれば、法の上にも下にも人を造らず、法のもとには万人が同じ扱いをうける、というもの。そのコンセプトの大きな下支えが陪審員制度だ。
陪審員ってそもそもどうやってなるのか。各自治体/裁判管轄区によって違いはあるが、一般的には選挙登録記録および運転免許登録記録をもとに、ランダムに「召喚状(jury summons)」が市民に送られる。(筆者の地元裁判所のFAQもご参考までに。)私も何度か受け取ったことがあるが、裁判所からの正式な「召喚状」であるため、一瞬ドキッとする。指定期日の出頭をしない場合はペナルティーもある、重々しい書簡だ。(私のような陪審員無資格者用はその旨を説明して送り返すだけ。)
この段階ではまだ陪審員「候補」である。ここで非常に大事な裁判準備過程である「Jury selection」がはじまるのだ。どんなバックグラウンドの人が陪審員として裁きを行うのか。その人となりを知ることは重要な情報であり弁護団にとっては最重要検討事項だ。それぞれのケースに合わせて専門的レコメンデーションをしてくれる「jury consultant」という職業もある。Jury selection過程では各候補者の性別、年齢、職業、ケース内容に関する予備知識があるか(ない方がいい)、ケースに関連する何か既成概念やバイアスを持っていないか、質疑応答をしながら候補を絞っていく。
陪審員に選ばれると毎日裁判に出頭するため、普通のサラリーマンには結構つらい。しかも長丁場になる裁判による長期拘束や、裁判中はメディア報道等に影響されずに中正を保てるよう、裁判官命令により「軟禁状態」(家に帰れない)になる場合もある。これは精神的負担も相当なもののはず。
ということのあって、陪審員になりにくい職業がいくつかある。ニューヨーク州のある裁判地区では最近まで自動的に陪審員義務免除となる職業リストが法律で決まっていたらしい。弁護士も含む専門職、医療従事者、公共サービスにたずさわる者、などなど... 一般的に高学歴職業が多く含まれていた。ニューヨーク州高等裁判所の最高判事を今年定年退職したJudith Kaye判事。彼女が残した重大功績の一つがこの「自動免除職業リスト」を廃止したことだった。
そのきっかけはKaye判事の娘の一言。「はじめて陪審員として召喚されたけど、沢山の男性に一度に出会ういい機会だったわ」と。ところが改めて陪審員候補に集まった有象無象の面々を見るととても自分の娘にふさわしい人材とは思えない。。。これは冗談まじりで法律コラムニストのJeffrey ToobinがNew Yorkerに書いていた話だが、いずれにせよKaye判事は「陪審員の質の全体的質の低さ」の危機を感じたらしい。これでは公正/迅速な裁判の進捗に支障をきたすと。
Kaye判事はさらに、陪審員控え室の質向上にも一役買ったらしい。まともなコーヒーをストックし、家具調度品もグレードアップなど、環境を整えた。結果、裁判手続きスピードもあがったらしい。
価値観も教育も育った環境も多様を極めるアメリカ。地元民により構成されるJuryが本当に裁きを受けるものの「Peer」なのか。「仲間による裁き」を達成するのは実は非常に難しいこと。せめて、裁きに立つ人間が美味しいコーヒーを飲んで、ちゃんと集中して弁護士や証人の話を聞けるのであればそれはそれで確かに改善なのだろう。

1 comments:
こんにちわ。 Damage Expertをやっていた hiroN です。 一度私がテスティファイしたサンフランシスコでのケースに、たまたまですが、しかも、とても例外的なので笑ってしまったのですが、友人のリティげーターが、陪審員になっていました。 証言台に立つまでわからなかったのですが、そのときに彼の顔を見ても、すごく煮てるなあ、とは思いましたが、まさか、彼本人だとは思えませんでした。 なぜかって? その彼は、リティゲーターで私のタイミングはずれていましたが、別のケースのクライエントでもあったのです。
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