最近、「インターネットの父」Vint Cerf大先生のお話を伺う機会があった。
「技術発展に法律が追いついていない」
という話の流れで、冗談まじりにこんなことも言っていた。
「Copyrightというネーミングからして問題。コンピューター/インターネット通信はコピーをすることで成り立っているのだから」
まったくその通り。
それからふと、前々から疑問だったことを思い出した。
日本の法律の殆どは明治維新後あるいは二次大戦後に作られた。欧米(特に戦後はアメリカ)の影響を受けた(というか模倣)ものが多い。そのせいか、英語で慣れ親しんだネーミングから容易に想像できるのが私の印象。
(米)Securities and Exchange Act (日)証券取引法
(米)Patent Act (日)特許法
(米)Antitrust Law (日)独占禁止法(厳密には「反トラスト」だが)
(米)Criminal Procedure Codes (日)刑事手続法
などなど。ところが、一つだけ突出して日本語が違うものがある。
(米)Copyright Act(日)著作権法
日本語の「著作権」は英語で「Rights of authorship」が近いだろうか。著作をした人が保有する権利を称する。一方のCopyrightは逆に、「Copy(複製)に関する権利」なので、そこだけ見ると適用範囲が狭い感じがする。Copyに関する様々なルールをまとめたのがCopyright law。一方の著作権法は著者が保持する権利全般に関する規定。複製だけでなく、送信、使用、その他諸々の行為を司る源泉は著者にある、と。非常に大雑把なところで、日本の著作権法は『著作者より』と言われる。今盛んに議論されている「日本版フェアユース」がこれまで認知されなていない背景にもなっている。学術的根拠はまったくないが、そもそものネーミングからしてそれがうなずける気がする。
今や世界標準になっている「Copyright (c)」表示。実は「Author right」という方が正確な気もする。著作物のコピーだけでなく、広範囲の著作者権利があるのだから。
ちなみに、アメリカのCopyright Actは1790年施行という、歴史の長いもの。米国独立直後のことだ。Copyright Actは米国憲法の第1章、8(8)条を実現するべく、制定された。
“the Congress shall have power … to promote the progress of science and useful arts, by securing for limited times to authors and inventors the exclusive right to their respective writings and discoveries.”
(抄訳:科学と文明の進化のために、著作者や発明者には一定期間、その著作物や発明に対して独占的(排他的)権利を持たせる法律をつくるべし)
現在のCopyright Actは今でも、1790年のオリジナルをもとにしたものだ。技術の発展に追いついてないのも無理はないかも。
1790年の当初、著作物としての保護期間はたったの14年(プラス14年の延長可)だった。1831年に28年(延長期間は変わらず)に改正され、1973年に「著作者の死後50年」に変更されるまでずっとそのままだった。1988年には有名な「Sonny Bono 法案」で「死後70年間」に延長され、今にいたる。
それにしても14年というのは短い。当時の平均寿命(35−40歳)に照らすと妥当なのかもしれないが。ちなみに16世紀後半に印刷機が導入され、商業印刷が進んていたイギリス。導入された法律はよりストレートに「Licensing Act(使用許諾に関する法律)」。この辺りの各国間の違いは結構、面白い。

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