2008年11月28日金曜日

Do you know Ernesto Miranda?

Mirandaさんという名前を聞いたことがないアメリカ人はいない、と断言できるほどの一般常識言葉。フルネームまでは知らないけど、Mirandaと聞けば「あれ」を誰でもすぐに思い出すでしょう。

刑事ドラマ等で見る犯人逮捕シーン。逃げようとする犯人の手をつかみ、背中にぐっ、とまわして壁に押し付ける刑事。ここで必ず登場する台詞。

「You have the right to remain silent. Anything you say can and will be used against you in the court of law. You have the right to an attorney. If you do not have an attorney, one will be appointed for you. 」

そして最後の締め。「Do you understand your rights?」

(抄訳:あなたには黙っている権利があります。この場での発言は裁判の場で使用される性質のものです。弁護人を立てる権利があります。弁護士が居ない場合には弁護士をつけてあげることもできます。これらの権利について理解しましたか?)

逮捕の時だけでなく、警官の取締り捜査を受ける時にも同様のお告げが行われる。これはドラマではなく、刑事手続きのイロハであり、法的義務である。お告げを受ける容疑者にとっては逆に「法的権利について通告を受ける権利」だ。

この通告の一般通称が「Miranda Warning」。Warningの受け手側から言うと「Miranda Rights」。Miranda vs. State of Arizona (384 U.S. 436 (1966))いう最高裁判所判例を起源とする。年は1966年。アメリカ市民権運動時代のまっただ中、歴史的裁判だった。(当時の口頭弁論記録含め詳細はこちら。判事7人が4−3に意見が分かれ、世論を揺るがせるものでもあった。)

裁判の発端となった刑事事件はこういうもの。1963年、当時22歳のErnesto Mirandaは強姦罪の重要参考人として警察署に連行された。ちなみにErnesto君は中学生の頃から逮捕や少年鑑別所行きを繰り返すという、かなりの筋金入りの若者だった。警察の取 調べの結果、最後には自分の罪を認める告白書にサインをしている。その後の裁判で罪状は確定し、20-30年の刑に服すことになった。(さらに詳細知りたい方はこちら。レトロな写真も面白いです。)

Ernesto君はところがすぐにあきらめるタイプではなかったようだ。警察の取り調べに屈して、仕方なく告白させられた、と。告白内容がそのまま裁判で証拠に使われるのはアンフェアだと、なんと自分で連邦最高裁判所に上訴請求までしている。(結果は棄却。)

その後、幸運にも市民権保護団体であるAmerican Civil Liberties Union (ACLU)のアリゾナ支部の敏腕弁護士の目にこのケースがとまった。彼の働きかけが功を奏して、Miranda裁判はまずアリゾナ州最高裁判所に上訴された。そこでは敗訴に終わったが、すぐに連邦最高裁判所に上告、1966年の上記の判決に至っている。

警察のいかなる取り調べにおいても、被疑者の権利はある。その権利について十分な告知があり、かつ相手がその権利を理解した上でないと取調べ自体が無効になるというルールが明確かつドラマチックな書きっぷりで判例として残されている。

Ernesto君においてはこの権利の通告が不十分であったこと、特に弁護人を要求する権利について十分な理解がないまま告白書の取得が行われたことが問題視された。結果、アリゾナ州での裁判結果は無効化された。

というわけで一旦は「自由の身」になったErnesto君。ムショ仲間にはヒーローとして崇められた。「犯罪者にも権利がある!」ことが彼のおかげで公に認められたのだ。Miranda Warningをはがき大の紙に印刷し、直筆サインを入れて$1.50で売り歩くという妙に商売人めいたこともしていた。

ところが翌年展開された再裁判では前述のACLU敏腕弁護士(こちらも今や法曹界のスター)の努力もむなしく、再度の有罪判決に。告白以外の証拠物件が多く、有罪を免れなかったようだ。その後仮釈放に至ったが、釈放中の身に関わらず遊び歩いたErnesto君。バーで酔っぱらい同士の喧嘩に巻き込まれ、34歳の若さで亡くなっている。

一方、彼の名前を冠したMiranda Warningはその後もずっと受け継がれてきている。そしてMiranda裁判もまた、アメリカ史上最も有名なケースの一つとして名高い。こんな有名人になるとは、本人も全く予想したなかっただろう。分かっていたら直筆サイン入りカード、もっと高値で売っても良かった気もする。。。 アリゾナに行く機会があったら是非地元の骨董屋をのぞいて見てください。当時のMiranda Warning カードが手に入るかもしれませんよ。

1 comments:

Koich さんのコメント...

I learned about "Miranda Rights" at a early age. LOL